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医療秘書の業務

●医療秘書の業務
 医療秘書は医療機関において医療の中枢をなす、外来診療部門、医局、 看護部門、医療技術部門、薬剤部門、事務部門などにおいて、さまざまな 業種にある人の補完的な業務に携わります。従って医療秘書の仕事の範囲 は、非常に広範囲なものとなります。
 また病院内の仕事は、人間の生死にかかわる場合が多いため医療秘書は 、そのまわりに見るさまざまなドラマにより人間的な成長をうながされま す。例えば救急車で運ばれたときには今にも死にそうなひどい状態であっ た患者さんが、入院して治療をうけた結果、どんどん治っていき退院でき るのを見るのは、医療秘書にとっても職業冥利につきる喜びであります。 反対に若くして病に倒れ、容態が急変してしまったという場合など、見る にしのびないつらい思いに襲われることもあります。しかしこれらの生命 をめぐる様々な人間模様に関与していることは、深く考えてみれば人間と して大変素晴らしい職業についているともいえます。
 医療秘書が毎日変化する仕事をかかえているということは、それに対応 するだけでも、大変な能力が要求されますが、考えようによってはこれも また人間性を鍛えてくれるのではないでしょうか。また同じ病院という名 のついている機関であっても、内科、外科、産婦人科、眼科、整形外科な どの診療科目の相違によって医療秘書の仕事や、人間性の鍛えられ方も違 ってきます。
 では、医療秘書の役割を、医療機関内の職種でまとめると次のようにな ります。

医学部教授、病院長、事務長、各部門管理者の個人秘書
病棟・外来診療科、医局、各部門管理者の個人秘書
受付、医療事務、コンピュータ業務、管理事務
診療録管理、図書管理などの補助業務
 以上の部門における具体的な医療秘書の業務内容をあげると以下のとお りになります。
(1)
診療の受付、診療の準備
(2)
患者の案内、来客の応対
(3)
簡単な主訴の聴取、問診カードの整備、受診科の決定
(4)
診療の予約整理
(5)
電話応対
(6)
診療介助
(7)
診療記録用写真の撮影、整理保管
(8)
診療器具の消毒・洗浄
(9)
診療の記録補助、トランスクライビング
(10)
検体、整理機能検査レポートの整理
(11)
診療、研究に必要な文献資料の収集・整理
(12)
医療機関の申請・報告書類の作成補助
(13)
管理資料の整理、統計、分析
(14)
来客接待、勤務部門の環境整備
(15)
郵便物、文書の整理
(16)
管理者・医師のスケジュール作成
(17)
各種文書の作成、(診断書、証明書、紹介状、返書、挨拶状 )
(18)
研究論文作成の補助
(19)
研究、実験の補助
(20)
外来診療録の整理、保管
(21)
入院診療録の管理補助
(22)
診療検討会、会議、委員会の準備、連絡、記録の作成
(23)
印刷物のレイアウト、後生、発注
(24)
医療機関行事の記録管理、保管
(25)
連絡文書の作成
(26)
医療機器、薬品、帳票類、事務用品の在庫整理、補給
(27)
診療情報の転記、伝票発行、整理、コンピュータ入力
(28)
各部署における情報伝達の授受
(29)
診療報酬点数算定および請求事務
(30)
診療報酬請求明細書の点検と整備
(31)
会計窓口業務
(32)
医療機関内の一般事務(総務、経理、用度、その他)
(33)
医療関連事業の事務(保険者、製薬会社、検査センター)
 以上のような役割をもち、業務を行ううえで医療秘書として、どのよう なことを学ぶことが必要であろうか、医療秘書教育全国協議会の医療秘書 技能検定の審査基準によると、学習内容を三つの領域に分け、第I領域は医 療秘書事務と医療機関の組織・運営、医療関連法規、第II領域は医学的基 礎知識、医療関連知識、第III領域は医療事務となっています。


 ○将来の展望
 医療秘書の専門性をもっと確かなものにするために、いくつかのアプロ ーチが考えられます。第一には、医療秘書自身がさらに自己啓発し、その 専門性を職場において発揮するよう努力しなければならない。より高度な 医学知識と語学力、日毎進歩するOA機器の操作、毎年のように改訂される 保険制度を熟知し、検査や薬理疾患の知識をつけます。さらに患者の心理 を理解してい臨機応変に対応するコミュニケーションの力をつける必要が あります。さらに、現実には数多くの医療秘書が全国の病院や医科大学な どで働いているにもかかわらず、横のつながりがありません。同じ立場に いる医療秘書の情報交換や連絡会のような組織が日本にはまだありません が。これは医療秘書の専門性を高め、社会的な医療秘書の認知を得るため にも早急に考える必要があるのではないでしょうか。
 第二は、教育機関レベルの向上と一定基準を保つ努力が必要でしょう。 現在全国には、数多くの医療秘書専門教育機関がありますが、年数、カリ キュラム、実習教育の有無など内容に大きな開きがあります。この為、 1988(昭和63)年に医療秘書教育全国協議会が、より充実した医療秘書の教 育を目指し全国専門学校50校をもって結成されました。この協議会の最重 要事業として毎年2回(春、秋)行われる医療秘書技能検定試験は、医療秘書 を目指す学生や現在利用期間で働いている医療秘書や医事課の事務職の人 々を対象に行われていますが、これは各教育機関のレベルを充実させる一 つの基準になっています。さらに、将来的には、医療秘書の専門性を構築 するために役立つ資格検定です。すでに採用する側の医療機関も2級合格を 採用の目安にしているところも増えてきています。医療秘書を目指し勉強 しているものにとっても自分のレベルを試し、さらに努力する指針になっ ています。
 第三は、もっと再教育の場が用意され、仕事の後でも簡単に勉強する機 会が作られなければなりません。これは本人の意欲だけでなく職場の理解 、時間的な余裕なくしては成立しません。進歩し変化する医学・医療知識 に対応し、OA機器の操作など最新の技術を習得すれば、それだけ医療秘書 の向上につながり、業務の合理化になります。再就職を希望する人々に役 立つ最新の情報と技能を与えることができる場も必要でしょう。
 第四は、病院管理者および医師の医療秘書に対する理解をより一層深め てもらうことが大切ではないでしょうか・専門性を生かして組織の中にき ちんと位置づけし、指示系統を明確にしていかなくては、医療秘書の存在 があやふやになってしまいます。また専門職としての給与体系もまだまだ 確立されていません。近年、医療秘書を企画管理部に位置づけ、職務記述 書を作成したり、医局や教授室でも仕事の範囲をきちんと明記している病 院が増えてきたのは大変喜ばしいことですが、一方では手不足の事務部門 や看護部門に便宜的に使われている場合も少なくありません。
 日本の医療秘書の将来を考えると、その職域がさらに広がると考えられ ます。高齢化社会の到来で、老人医療、リハビリ、レクリエーション、予 防医学や公衆衛生など多くの医療関連施設や病院が新しい形で病院を経営 しようとしています。そこにはかならず医療や医学知識があり、コミュニ ケーション力を備えた事務処理に堪能な人材である医療秘書が必要になっ てきます。事実多くの卒業生が、健康管理センターのスタッフやリハビリ 部門、在宅医療部門などでも活躍していますし、薬品会社の情報処理セン ター、大企業の従業員専用の保険施設や診療所にも進出しています。
 この傾向はますます増え、医療秘書の活躍の場やアメリカのように広範 囲になることは間違いありませんが、医療秘書の専門性を明確にしないで いると、専門職としての定着が進みにくいのではないかと懸念されていま す。
 しかし一方では、医療秘書に対する病院側の期待は大きいです。それは 、多くの医療機関は財政難から経営管理の見直しを迫られています。医師 や診療補助部門の技術者群を、いかに効率よく活用させるか、いかに事務 処理をスピードアップし合理化するかが検討されてきています。患者を待 たせない、医師とゆっくり話ができるというような基本的な患者へのサー ビスの改善が必要であり、そのために、医療秘書の活用が各病院に定着し てきています。また需要も増えてきています。
 もう一方では、教育機関の充実により、より実践的な人材が毎年病院に 送り出されていることです。とくにこの10年先輩たちの地味ではあります が確実なパイオニアとしてのアユミは、医療秘書としての確かな基礎を築 いています。さらに前述した医療秘書検定試験は、医療秘書を目指すもの だけでなく、現場で働く人々や卒業生に一つの目標となってきていますし 、社会的に医療秘書の存在を知らせる役割を果たしています。
 医療秘書が医療機関の事務部門の専門職としての基礎ができたところで すので、これからが正念場となるでしょう。そのためには、医療秘書自ら が積極的に仕事に取り組むことはもちろんですが、経営管理者たちが、医 療機関の特殊性を考慮した医療秘書の役割をきちんと組織の中に位置づけ ることが必要なのではないでしょうか。特に大学病院・公立病院は一番古 く医療秘書を採用し、その数も多いにもかかわらず、給与体系が不安定で す。非常勤扱いであったり、医局の私設秘書として医局費から給与が支払 われていたり、年限を決めた契約職員であったりと多くの問題をかかえて います。これは雇用者側のみに責任があるのではなく、そのような採用条 件でも、あまんじて仕事を求める者がお多いからで、これではなかなか現 状が改善されないのではないでしょうか。
 医療秘書を目指す者たちが、パイオニアとして、その専門性を自ら自覚 し、理想を実現することができるよう自らパーソナリティや技能を伸ばし 、社会的な認識を得るよう努力しなければならないでしょう。